「…遇ったコトならあるさ」

私の背後で
バードさんの震えた声がする。


「あのオンナ…ッ!

僕達の前で!

これでもか、って
酷いコトバで

我が子を
罵って行ったんだ!」


「……」


「受験に失敗したくらいで

何で母親にあそこまで
無茶苦茶、言われなきゃ
ならないんだ…!」


顔をあげたバードさんが
真っ赤な目を見開いて

嗚咽のように
怒りを吐き出した。


「受験、って…」

クボ先輩が小6の
中学受験のときの
話だろうか。


そう言えば、以前

セイの白い制服を見て
クボ先輩が

セイの学校を
受験したコトがあるんだ、と
言っていたような…。


私のオボロゲな記憶は

「ウチの学校の偏差値
知ってる?」

セイのひと言で
確信に変わる。


「あの、超がつく
ハイレベルな学校に

自分の息子が
合格して当たり前、なんて

期待して貰ってるだけ
ありがたいと
思えないモノかねえ」


セイのクールなひと言に

「…期待、ね!」

バードさんの強張った顔に
挑戦的な笑みが浮かんだ。


「期待するのなら

彼の将来や
その才能にしてやれば
いいじゃないか!」