レクイエム#065


「警察が
探していた、って…」

なんだかキナくさい話に
なってきた。


静まり返った部屋。


集められた画用紙が
カササ、と
油紙の上で音を立てる。


このマンションの住民は
もう床についてしまった
のだろうか。


エレベーターホールでの
騒ぎのときは

あんなに大勢の住民が
顔を出していたのに。


やっぱり

この部屋に出る、とウワサの
幽霊の影響も
あるのだろうか。


「あのね、セイ、もう…?」

嫌な予感が
私の鼓動を速くしていた。


なのに

「“当時の”俺ってさ

ほら、あの転落事故について
興味があったワケじゃん?」


セイは
“当時の”という単語を
エクスキューズで強調し

話を進めようとする。


「当時の
警察の記録によれば

現場である、この部屋に
居合わせていたのは

アンタと、転落したふたりと

クボの本妻の4人」


セイが長く伸びた指を4本
自分の顔の前で指立てた。


「え」


…バードさんと本妻さんが

「現場に、いた?」