「フン」


不本意だ、と
言わんばかりに

バードさんに掴まれていた
縦襟のシワを直しながら

セイが不機嫌そうに
背中を向ける。


「……」


想像もしなかった
期待もしていなかった

その可能性。


「…ふたりで描いた絵を

クボくんが大切に
持っていたように

義弟くんも…?」


バードさんは
興奮を抑えきれない様子で

セイの腕を再び掴み
乱暴に向き直らせた。


「知るかよ」


「…そっか。
そうだったんだ。

そっかあ…」


バードさんが信じたかった

こうであって欲しいと
願っていた

義兄弟の絆。


バードさんの切れ長の目から
大粒の涙が零れ落ちる。


それは

感慨の瞬間。


…のハズだった。