レクイエム#067


「…今、何か」

とんでもないコトを
聴いた気がしましたがッ。


「……」
「……」
「……」


瞳に激しい色を映した
バードさんは

己の額に指を食い込ませ
その憤りを隠さずにいる。


バードさんは
自分が何を口走ったのか

気がついて
いるのだろうか。


“ベランダから
突き落として”


「…それって
本妻さんが“故意”に

ふたりを殺した、って
意味だよね…?」


「……」

「あッ」


声に出すつもりなど
なかったのに


「ごめんなさいッ、つい
私ッ」


「……」

「あのッ」


「……」

「そのッ」


「……」


バードさんは
己の失態を悔やむかのように
唇を噛んでいて


「あのさあ!」

「!」


気まずい空気を
引き裂くように

セイのおおきな声が
玄関に響いた。