「…無事だった絵が
ベランダに飛び出していて
それを長男が
追い掛けたんだって?」
カーテンを開き
ガラガラガラ、と
おおきな音を立てながら
セイが
アルミ製の古いサッシを
スライドさせる。
「そのとき本妻は
破られた絵を
自分のショルダーバッグに
拾い集めるアンタの
非難めいた視線にムカついて
アンタとショルダーバッグを
奪い合っていた」
供述調書を再現する
しなやかな
セイの腕の動きを
バードさんは黙って
睨み続けていた。
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