「廊下に
差し掛かったトコロで
今度は先輩の叫び声がして
振り返ると
エアコンの室外機に
足を掛けた先輩が
柵の外に
再びおおきく飛び出した
クボくんの上半身に
しがみついていて」
「……」
「慌てて引き戻ろうとした
僕に
クボくんがVサインしてて」
“大丈夫だから”
“逃げて”
柵の外側に
足場を見つけたらしく
上手く体制を戻して
「あのとき確かに
クボくんは
先輩の手を借りず
しっかりと
柵の外に立っていたんだ!」
「……」
「…しっかり
立っていたんだ…」
“なのに”
「あの状態から
落下するなんて…!」
アタマを抱え
己の前髪を握り込んだ
バードさんの白い拳が
震えている。
「…だから
危機を脱したその状況から
再び転落するのは
不自然だ、と?」
セイの静かな口調が
怖かった。