「あの通り、本妻は
プライド高く直情型で
妾腹の義理の息子との間には
ああいう修羅場が
頻繁にあったらしいし
相手のアイデンティティーを
崩壊させんばかりの毒は
吐くけど
自分から手をあげたコトって
なかったようなんだよね」
「そんな言い逃れが!」
バードさんが
脊髄反射に反論する。
「自傷疵だって
自分でつけた傷なんだろ?」
「そうせざるを得ないよう
クボくんを
追い詰めたのは…!」
「引き金になったのは
確かに本妻のコトバ
だったのかもしれないけれど
突き詰めていけば
あれってさ
自身の産みの親への
無意識のパフォーマンス
だったみたいでね」
…無意識のパフォーマンス。
自分を手放した母親への
当てつけ、ってコト
なんだろうか。
「あはッ、なんで
そういう話になるんだか!」
事実をすり替えるな、と
言わんばかりに
バードさんの目が泳いだ。
「母親が自分に
会いに来てくれた、と
思ったら
家を預かっている人間に
金の無心に来ていただけ
だという
現実」
「……」
「母親が若いオトコと
楽しそうにイチャつきながら
車で走り去るのを
見送りながら
自分のカラダを
切り刻んでいた、ってさ」