「え。だってお前ら
聴かなかったじゃん?」
「あのセイの話の流れから
そんな発想ッ
出るワケないでしょッ!」
呆れてモノも言えませんッ。
「ようするに
そういうコト、なんだよね」
「何がよッ!」
「“思い込み”って
コワイよな、って教訓」
「え」
「…人間なんてさ
どんなに
全体を見ているつもりでも
所詮は側面しか
見えてないんだよなあ」
セイがカーテンに
もたれながら
雲間に覗くまあるい月夜を
見あげている。
「セイ…?」
月夜のやわらかな
蒼い光を浴びた
キレイなセイの横顔が
私に次のセリフを
忘れさせた。
…なんだか
今日のセイには
調子を
狂わされてばかりいる。
「……」
この言い知れぬ胸の不安は
何なのだろう。