「…なら。
もしそうならさ。
こう考えられない、かな?」
動揺を隠せないバードさんが
口を開く。
「本妻は
周りにヒトがいるときは
手をあげたりは
しなかったけど
子ども達しかいないときは
違う顔を見せていた、とか」
バードさんが食い下がった。
「どうかな?
本妻は忙しい身でね。
ボランティア団体も
いくつか持っているからさ」
勿体つけたセイの言い回しに
「だから
何だと言うのかな!」
バードさんが苛立っている。
「打ち合わせとか
確認とか、電話連絡とか
移動の時間を惜しんで
いつも傍に誰かと一緒。
ひとりで行動するなんて
まずナイだろうね」
「そんなハズは!
だって、あの日
あのオンナはひとりで
この部屋にやって来たし!
僕らがそこにいるなんて
知らなかったハズだから!」
バードさんが強く抵抗した。
「弁護士と
一緒だったんだよね」
「え」
「弁護士の運転する車で
マンションに来て
弁護士が
かかってきた電話に
出ている最中に
先にひとりで
この部屋にやってきた」
あ…。
「だから事故現場に
到着したのが
警察や救急車より
弁護士の方が
早かったんだ!」