「トーコの言う通り。
アンタ
エレベーターを待たずに
非常階段から
降りたんだろ?」
セイが珍しく私を認めて
「螺旋階段を激しく
駆け降りる足音を聴いた、と
住民達が証言している」
話を続ける。
「…それは!」
バードさんが
アタマを上下させ
おおきく頷きながらも
「そうだけど」
反論しようとするけれど
「そうなんだけど…」
その材料が
見当たらないようだった。
「アンタは納得いかないかも
だけどさ。
本妻と妾腹の息子。
あれはあれで
バランスのとれたカンケイ
だったんじゃねえの?」
「……」
「逃げようと思えば
義理の母親である本妻から
いつでも逃げ出せる。
なのにそれをしようと
しなかったのは…」
「義弟くんへの愛…」