イチイチ癇に障る
セイの抑揚に

バードさんじゃなくても
眉を寄せたくなってしまう。


「アンタは
死んだ長男やあの愛人に
同情して

この部屋は
産みの母親である愛人側に
引き継がれるのが当然だ、と

思っているのかも
しれないけどさあ」


セイの問い掛けにも

バードさんは
身を固くしたまま
沈黙を貫いている。


「あのねッ、セイッ!

そんなの
当たり前じゃないッ」


「何で?」


「未成年の子どもの遺品は
親のモノでしょ!」


「この部屋にあるモノは
長男が生きていたときから
クボ家の所有物であって

あくまで
長男に貸し与えていたモノ
だからね」


「親が子に与えたモノは
レンタルには当たらないと
思うんですがッ!」


「ああ、そうだな。

“長男”って表現自体が
そもそも
不適切だったかな?」


はいッ?


「死んだ長男は
戸籍上“長男”ではなく

あくまで“養子”であり

“実子”として
認められていたワケでは
ないからね」


え。