「トーコちゃん
音声、全部
解除してくれてたんじゃ
なかったの!?」
「え、あ。
私が解除したのは
タイマーで」
セイが音が鳴っている方向を
怪訝そうに
睨みつけている。
「時計の音、なのかよ」
セイがいつになく
予想外の出来事に
過敏になっているのが
伝わってきて
「初めて聴いたヒトは
この音、ビックリするよね」
私はそんなセイを
腫れモノにでも触るように
扱ってしまっていた。
「今、止めるね」
セイに気を遣いながら
立ち上がり
私が棚の上の
ぬいぐるみのような
フクロウの時計を
持ち上げようとした私を
「待って」
バードさんの手が阻む。
「なんかおかしくない?」
バードさん?
「だってさ。
キミ、この部屋での会話
盗聴して聴いていたん
だったよね?」
月光の下
不審に満ちた
切れ長の潤んだ瞳が
他人事のように目を逸らす
セイを見下ろしていた。