「…あの盗聴器は
試作品でさ」


セイの声に振り返ると

俯いているセイの
口元が笑っていた。


「部屋の灯りなんかを
エネルギーに替えて
動いてるから

車の中みたいな
薄暗い場所では

使いモノには
ならなかったみたい」


セイが
もっともらしい説明を
静かに口にするけれど

そこには
いつもの精彩さがない。


歯切れの悪い言い訳。


「……」
「……」


相手に疑問を持たせない
巧みな話術

自信に満ちた揺るぎない声で

常に自分のペースで
コトを運ぼうとする

それが
セイではなかったのか。


「そもそも

セイは何の為に
私に盗聴器なんか…」


私にこんな質問を
許してしまう

セイの迫力のない姿に

言い知れぬ不安が
押し寄せてきた。


「…“何の為に”、か」

セイが笑う。