レクイエム#072


私のパーカーのフードを
乱暴に掴んでいる

ふざけたオトコの
声のする方に顔を向ける。


「よぉ」

「テルさんッ!?」


予想だにしなかった人物の
登場に

「あ、ははは」

私の全身からチカラが抜けた。


まさか

あれだけ散々
我が身大事、を
アピールしていたヒトが

「戻ってくるなんて…」

信じられない、けれど。


ここは安堵してもいい
場面、なんだよね…?


「やだな〜。

この俺がトーコちゃんを
見捨てるワケないっしょ?」


テルさんが
私のフードをさらに
高く持ち上げる。


「ほら、ちゃんと立って」

「……」


その人間性に
多少の疑問は残る
テルさんではあるけれど

セイの相棒であり
片腕であるには違いなくて。


セイのコントロール下に
置けば
優秀な能力を発揮する

心強い存在の登場

…のハズだった。