調子のいいテルさんと
目を合わせるコトもなく

「…帰るぞ」

セイが
私の肩を素早く抱き寄せ

玄関を塞いでいた
テルさんのカラダを
邪魔にする。


セイに掴まれている肩が
痛かった。


「セイ…?」


確かに

今日のセイは
いつになく
機嫌が悪いけど…。


斜め下から
見あげようとした
セイの横顔が

月影邪魔されて
確認できない。


「……」


もつれる足。


右足の足の裏が
廊下の冷たさを
伝えてきた。


廊下を足早に進む
私達の背後で

「トーコちゃん、靴ッ!」

バードさんの声がする。


「セイッ、ちょいタンマッ!

私ッ靴が履けてないからッ」


引っ掛けただけの状態の
左足の靴も

今にも
脱げそうになっているのに

「…ッ」

セイの舌打ちに

私は足を止めるコトが
出来ずにいた。


「いいのかなあ、アレ。


キリエさんの犬!

ハンモックの上で
遊んでいますけど〜お」