セイの傍に駆け寄り
手すりから身を乗り出すと
中庭のフットライト
逆光に照らし出され
張り巡らされたネットと共に
黒いおおきなシルエットが
浮かんでいる。
「あのバカ犬
どこから落下したのか
俺が見つけたときは
すでにあの状態でさあ」
テルさんが
他人事のように
犬を指さしていた。
あのヤンチャな犬が
ネットの上
身動きもせず
鳴き声ひとつ
あげてない…?
「落ちたときにもがいて
首輪がネットに
引っ掛かっちゃって
ハンギング状態とか
だったら
最悪だよねえ?」
テルさんの
首つりジェスチャーに
最悪な光景がアタマを過る。
「ウソ、だよな…?」
バードさんが
手すりを掴んだまま
崩れ落ちるように
その場にしゃがみ込み
無情の風が再びネットを
揺り動かしては
私達から“希望”を
奪っていこうとしていた。
「助けなきゃ…!」
「……」
「バードさんッ
あきらめるのは
まだ早いから…!!!」