我ながら
素っ頓狂すぎる訴えにも

ツッコミどころか
表情ひとつ変えないセイに

バクバクと波打つ
心臓の音。


「あ〜、あの犬
今、動いたぜ!」


「!!」


その声に振り返ると

テルさんが
こっちを見ながら

中庭の方を
指さしていて。


「生きてたよッ、セイ!

生きてるからッ!」


神様はまだ

あの犬を、私達を
見捨ててはいなかった!


セイの手を振り払い

先を急ごうとした
私のカラダを

さらに強いチカラで
セイが引き寄せる。


「世の中に
都合いい偶然なんて

そうそう
あってたまるかよ」


「セイ…?」


セイが睨みつけていた
視線の先を追い

振り返ると

エレベーターの中の壁に
真っ赤な

「貼り紙…?」