「平気、平気。
エレベーターってさ
停電になっても
中に設置された
“非常呼出ボタン”は
活きてるから」
背中についたホコリを
払うみたいに
すがりつこうとした
私の手を
テルさんが振り解く。
「そのうち
管理会社の連中が
駆けつけてくるだろうから
放っておいても
大丈夫だよ」
「でもッ」
「大丈夫だってば」
…アナタの“大丈夫”には
不安しか感じられずッ。
「……」
本当に、もう…!
「“何でセイはこんなヤツを
連れに選んでいるのか
理解に苦しむ”」
「えッ」
「トーコちゃんの顔に
そう書いてある」
私に背中を向けたまま
テルさんが鼻で笑った。
「セイは…
アイツは、いかに自分が
有利な立場にいるのかを
よくわかっているからさ」
「テル、さん?」