レクイエム#074
「……」
このヒトは本当に
この状況を
わかっているのだろうか。
「トーコちゃんの短い眉毛
ハの字になってるッ」
テルさんが
ママ譲りな私の“困り顔”を
「思わず、お手、とか
やらせたくなる
セイの気持ち、わかるな〜」
イタズラな目をして
からかってくる。
「…あのですねッ」
「アドバイス欲しい?」
差し出された手に
「欲しいですッ!!!!!」
「……」
「……」
反射的に
“お手”をしてしまっている
自分が口惜しい…ッ。
なのにッ
「…残念だけど
俺、トーコちゃんに
あげられるような
素敵なアドバイス
持ち合わせては
いないみたい」
テルさんが目を細め
口の端を上げ
ワザとらしい笑みを
私に向けた。
「……」
…これってもしかして
“お手”損、ってヤツ
ですかッ。