…稀に見る気難しい相手。
そもそも
一度、私を置いて
逃げ出しておいて
再びこうして戻って来たのは
何故なのか。
気まぐれ?
それとも
逃げたフリをしていただけで
どこかでチャンスを
伺っていただけ
だったとか?
このヒトの考えてるコト
行動基準が
全くつかめない。
「……」
風に吹かれて
ギシギシと中庭の木々達が
犬を乗せたネットの揺れを
私に伝えてくる。
こうしている間にも
ひとつの命が
危険に晒されていて。
「…あのワンちゃん
あの状態で発見されてから
どれくらい時間が
経っているのかな」
自分の無能っぷりへの
腹立たしさに
「……」
ぎゅうむ。
握り拳にチカラが入った。
「あ〜…時間ね〜」
テルさんが自分の左袖を
捲り上げる。
あれ。
「テルさん
腕時計してたんですか!」