ここは冷静に冷静に
考えて、考えて、考えて。
「ひとつ間違えば
排水溝とかに…!」
説得しようとした
私を尻目に
「!!!」
ライターを
持っていた方の手で
テルさんがユサユサと
ネットを
揺さぶり出していてッ!
「テルさんッッッ」
「!?」
私は思わず
テルさんの両手の上に
自分の上半身を押しこんで
塀の上に抑え込み
ガツ。
無防備なアゴに向かって
斜め下から
頭突きを食らわせた!
「あぐッう」
声にならない痛みが
テルさんを襲うスキに
私はテルさんの手から
火の点いたマーカーペンを
奪い取り
ペン先を壁に押しつける。
「…そんなコトをして
あのバカ犬を
助けたくはナイのかねえ?」
…え。
「せっかく、この俺が
知恵を貸してやろうと
思ったのにさ」
片足を立て
座り込んだままのテルさんが
血の混じった唾液を
吐き捨てた。
え。
「だって…?」