激しい俺様口調。

「俺が引っ張って
芯を引っ張り出すから

潰れた先っちょ

そのお高い差し歯で
しっかり支えてな」

「……」


暴行犯に折られて

美容歯科医のテツオさんに
丁寧に仕上げ手貰った
私の前歯。


ちょっとやそっとじゃ
差し歯なんて
気づかれる代物じゃない。


知っているんだね。

いろんなコト。


セイがそこまで
信用している相手を

私が不審に思う理由はナイ。


はむ。


言われた通り
しっかりと前歯で
マーカーペンの潰れた先の
根元を掴む。


その独特の臭いや味よりも
まだしっかりと残っている
熱さに

「い〜〜〜〜〜」

唇と舌を避難させた。


“どうぞ”と目で合図した私に

「セイが
いつも言うんだよ」


“アイツは
運の強いヤツだから”


「俺、アイツに
そのセリフを吐かれる度に

不愉快な思いを
してきたからね」


テルさんが
静かに笑ってる。


私の鼻を摘み

きゅ、きゅ、きゅうう。


あっけないくらい
わずかなチカラで

マーカーの芯が
飛び出してきた。