「ちょ…!」

テルさんの奇行に
目を奪われていた私に

「そこに誰かいるのか!」

階下から
強烈なライトが当てられる。


「おい、どうした?」

さっきとはまた違う
ふたり目の男性の声。


「いえ、空中に火が」

下から聴こえてきた
男性の指摘に

「あッッ」

私は鉄柵から伸ばしていた
自分の腕を引っ込めた。


「空中に火があるなんて
バカなコトがあるモノか」

ちょっと怖さそうな
ドスの利いた
そのヒトのしゃべり方に

私は反射的に
その場に屈みこみ身を隠す。


「…うるさくしてたから

警備会社のヒトを
住人の誰かに
呼ばれちゃったんだろうか」


私は薄暗闇に
目を慣らしながら

エレベーターホール側の
テルさんの方へ
視線を送ると

「え?」

そこにいるハズの
テルさんの姿がない!?


「冗談でしょおおお!!!」

思わず身を起こした瞬間

「誰だ!」

私の真後ろに
下からのライトが当たる。