ひええええええええ。


「やっぱり誰かいるぞ」

「放火魔じゃないのか?」


\"誤解のタネ\"を握る手に
うっすらと汗が滲みッ

「捕まっては
イケない気がするッ」

塀で身を隠しながら

エレベーターホール脇

バタタタ、と
忙しい足音のする階段へと

小走りに急ぎ駆け寄った。


「テ…!」

エレベーター脇の階段内で
響く自分の声に驚き

私は息を呑み、耳を凝らす。


足音が止んで

階上の方からピピピピ、と
ちいさな電子音がした。


「この上って
屋上…だよね?」


何故、階下ではなく
テルさんは屋上に
駆け上がっていったのか。


カンカンカンと
非常階段を駆け上がってくる
重い軍靴の音が

「どうしよう。ワンオーだ」

私の判断を焦らせる。


「賢い人間の考えるコトは
わからないけど」

とにかく

屋上へ逃げよう、と
テルさんが判断したのだ。


「おしッ」

私は足音を立てないよう
テルさんを追い掛け

階段を2段飛ばしで
駆け上った。