ギイイ、と
錆びついた重い音。
屋上へと続く扉が
私の目に入ってくる。
「なんで、そうやって
自分だけ逃げようと
するんですかッ!」
閉まろうとしていた扉の
わずかな隙間に
持っていたマーカーペンを
挟み入れようと
腕を伸ばしたその瞬間ッ
「!!」
扉が突然おおきく開いた!
「わ、わ、わ」
勢いづいたまま
そのまま扉の向こうへと
倒れ込む私の右腕が
正面から強く掴まれる。
「テ、テルさんッ」
「はい、何でしょう?」
私の背後から聴こえてくる
テルさんの声。
「……」
じゃあ、この私の腕を
掴んでいるヒトは…。
「この上から声がするぞ」
階段を駆け上がってくる
複数人の足音に
振り向くと
「じゃあね。
ご苦労様でした」
テルさんが私に
ちいさく敬礼してみせた。
「テルさッ…!」
声をあげようとした
私の口が
扉の向こうから伸びてきた
何者かの手で塞がれる。
「後はよろしく」
テルさんが
扉の向こうの相手に
静かに笑い掛けていた。
月夜に啼く春鶯
〜ツキヨニナクトリ
レクイエム#076
≪〜完〜≫
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