セイの牙は
今度は
私の指からうなじへと
好奇心の矛先を変え
「トーコはカラダ中
どこもかしこも旨そうだ」
甘噛みをする。
その手は
Tシャツを捲くり上げ
当たり前のように
ジャージの中に入ってきて。
「ダメッ!
ゲームの続きするんだからッ」
「こっちのゲームは
もう始まっちゃったから」
もう、止められない、って
それが
まるで当然の権利だと
言わんばかりに
セイの長い指が
私の感じやすいトコロを
捏ねあげてきて。
「こら、逃げるなよ」
セイの体重が私の背中に
おおきく圧し掛かってきた。
「トーコの大事なトコロが
傷つかないように、って」
どんなに忙しくても
面倒でも
「こういうときのために
俺はツメの手入れを
してるんだからさ」
って。
何を言っているんだかッ。
「…ワケわかんないッ」
「トーコという人間が
俺の為に存在しているように
俺のこの指も
トーコの為に
存在してるってコト」
セイが
自分のルールで
このゲームを進めようとして。
そんなセイの理屈を
論破してやりたいと
アタマの中では
強く望んでいると言うのに
「あ、あ」
「や」
「あ…ふ、う」
「あ」
その意志に反して
セイの磨き上げた指の
絶妙な動きに
私は恥ずかしい声を
漏らしてしまっていて。
「…セイの…バカッ、あ」
セイの腕に
堪らずツメを立てる。