焦げない加工がされた
いつものフライパンだと
キレイに仕上がらない、と

タマネギ炒めにしか
使わないフライパンが

我が家には
あるくらいで。


確かに
このハンバーグ作りには

ママも相当な気合いが
いつも入っている。


このハンバーグだけは

”ママの味”だ、と
胸を張ってみせるのも

充分に納得で。


ハーブなんか

家にあっても
他の料理に
使うコトもないのに。


面倒に思うコトなく
どの過程も端折るコトなく

”あの”ママが

最後まで気を抜かず
作っていくのだ。


「トーコも
ちゃんと覚えて

この味を
引き継いでくれると

嬉しいわ」


そう言っては

私が手伝う場面が
手伝う度に増えていく。


「肉の脂が
体温で融けちゃうからね」


ママが
私に冷たい水で
手を冷やさせて。


料理人でも

ここまで気を遣っていたら
凄いな、って思うのに


”あの”面倒くさがりの
ママが、だよ!?


もうホントッ

これだけは
尊敬の域にまで到達するッ。


「この混ぜ方にも
ポイントがあってね」


手の感触で覚えてね、って

ママが私に
肉を捏ねさせると


ここぞ、というタイミングで

豆腐を投入した。


「トーコにやらせて
大丈夫かよ〜」