憎まれ口ばっかりの
セイがまた
キッチンに顔を出してきてッ。
思わず
肉のこびりついた手で
セイの顔を
襲ってやろうとしたら。
「肉の分量が
変わっちゃうから
やめてちょうだい!」
ママが珍しく
悲痛な声をあげた。
「肉の焼き時間にも
関わってくるから!」
分量が変わると
焼き時間の調整が
ママにはできない、って
ママが私に訴えてくるッ。
「…このハンバーグって
ママが考えだしたんじゃ
ないの?」
「教えて貰ったのよ」
応用が利かないのは
とっても
ママらしかったけど。
「だったら
そのヒトにアドバイス
貰えばいいのに」
「墓の下にいる人間に
アドバイスを貰えたら
相当の霊能力の持ち主だな」
え?
セイが
私のヒジを持って
作業を続けろ、と
ボールの中に
私の手を突っ込ませた。
「…セイは
ちいさい頃から
好き嫌いが多くて
食が細い子だった
みたいでね」
セイの本当のママが
セイに
何とか食べさそうと
当時、一生懸命研究して
完成させた
究極のハンバーグなのだ、と
ママが私の顔をみた。
「今、考えると
セイのママに
もっといろんな料理を
教わっておけば
よかった、って
後悔してるわ」