チュッちゅ♂013


「さっき
ウチのマンションの
エレベーターで

ひさしぶりに
ケンちゃんに遇ったよッ」


外から帰るなり

リビングでDVDを見ていた
セイを掴まえて

私は野生の少女との再会を
懐かしむ。


「おばあちゃんと
いっしょだったみたいでね。

ご挨拶したら

いつかのお礼
言われちゃった♪」


「…ダケンの母親。
退院したんだってな」


セイは
DVDを早送りしながら

チーズスナックを
頬張った。


「もしかして

セイもケンちゃんに
遇ったとかッ!?」


「研究室に行く時間。

なぜかいっつも
アイツと遭遇してしまう」


セイってばッ!

そんな話

ちっとも話してくれなかった
じゃないッ。


「ずいぶん生意気な口を
利くようになってただろ?」

セイが
私の顔を見て

ニヤリ、と笑う。


「…え、ああ。まあね」


「子どもは
どうやってつくるのか

自分は知ってるんだ、って

大声で自慢されただろ?」


「セイも自慢されたんだッ」


…どうやら
それはダケンちゃんの
マイブームとかいうモノ
らしいのだが。


「オトナが赤面して
慌てるのを見るのが

面白いんだろうけどね」