「……」
さっきコーチに
叱られたのと
言い方は違うけど
指摘されているのは
同じ点で。
しかも
部長のナンノの本気さに
チームメイト達も
その場に
凍りついてしまう。
何だか
コーチがナンノに
配役チェンジしただけで
同じ時間を引き戻って
繰り返してるみたいだ。
「私は親友だと思うから
トーコの為に
客観的な目で
言ってあげてるんだからねッ」
「…うん」
気持ちは
ありがたいけれど
自分でもわかっている
自分のコトを
何度も、何度も
こうやって注意されると
さすがに
ちょっとシンドイかな。
「今回のコトだけじゃ
ないんだからさ」
自分のコトを
見つめ直すには
いい機会だと思うからッ、って
かなり
長引きそうなその気配に
「まあまあ、ナンノッ。
トーコだって
コーチからあんだけ
言われてたんだから
わかってる、って」
チームメイトが
助け舟を出してくれた。
「…もうッ」
まだ言い足りないって
カンジで
ナンノが更衣室に
入っていった。
「ほおおおおおお」
…ごめん、ナンノ。
気持ちは
嬉しいけれど。
これ以上
自分の至らなさを
指摘されたら
自分のアイデンティティーを
見失いそうになる。
更衣室で
着替え始めていたナンノと
目が合って
気まずく笑うと
…無視された。