パパがどうしても
セイの目利きが
必要だ、なんて

アタマを
下げてくるモンだから

せっかくの
デートだったのに

こ〜して
予定を変更して

パパのお仕事に
つき合ってあげてる、って
ゆ〜のにねッ。


さっさと
適当なのを見つけて

パパに美味しいモノでも
ごちそうして貰わねば
割に合わないッ。


でも。

「あれ、この本…」


私の目の中に
飛び込んできた

古いテキスタイルの本。


民族衣装や
珍しい布のデザインが
いっぱい載ってて。


「いいなあ。この本」


いくらくらい
するんだろうか。


「ハードカバーだから

定価で買ったら
相当しそうなんだけど」


そうは言っても
古本だしね…。


「げげげげげッッ」


…見なかったコトにしよう。


定価より高い、三万円ッ。


「絶版になったから
高いのかなッ」


今、この場で
この目に
焼きつけていこうッ。


私はその場に座り込んで

1ページ、1ページ
おバカなアタマに
記憶させていった。


「何、座り込んでるんだよ〜」


さっきから

セイが私を注意する声が
うるさいッ。


「冷たい床に座り込んでたら
痔になるぞ〜」


「……」

私は見ていた本を
ゆっくり閉じた。


「セイ〜!
これなんか、どうかなあ〜」


平積みしてあった本に
隠れていた
画集を掘り出して

取りあえず

パパに協力している
フリをするッ。