「どれ〜?」
セイが
山積みになった本を
避けながら
私に近づいてきて
「!!!」
どさくさ紛れにキスをするッ。
…ミントの香りッ!
「ズルイッ!
セイだけ
ガムなんて噛んでる」
「お前も噛む?」
「噛みかけなら
いらないからッ」
「遠慮するなよ」
セイの噛みかけのガムを
押しつけ合ったッ。
「ちょっとッ!
商品にガムなんか
つけないでくれよ!」
店主らしき
オジサンが飛んでくるッ。
「…スミマセン」
アタマを下げる私の口に
セイは
噛みかけのガムを
押し込むと
「これ。
値札がないようだけど
いくらになります?」
私の持っていた画集を
セイが店主に見せた。
「…百万円、ってトコ
ですかな」
店主が
バカにした笑いをしてッ。
…カンジ悪いッ。
「そう、残念だ。
八十万くらいなら
買おうかと思ったんだけど」
セイは
自分の財布の中の
カードを
わざとらしく
店主に見せつける。
「……」
セイの財布に並んでいる
黒やプラチナのカード。
「…では、八十万円で」
店主の目の色が
明らかに変わってるッ。