「悪いけど。
俺、ボッタクる店では
買わないって決めてるから」
「…勉強をさせて
戴きますからッ!」
上客を逃がすモノかと
店主も必死だッ。
「じゃあ、この本なら
いくらにしてくれるの?」
…さっき
私が夢中になって見ていた
三万円の値段がついていた
テキスタイルの本。
「これ
図書館の放出品だよね」
ラベルの跡が
微かについてるし
糊のニオイも
残ってる、って
セイってば
いつの間にそんなコトまでッ。
「…では二百円で」
「まあ、相場、ってトコ
だろうな」
セイが私の財布から
二百円を取り出して
「商談、成立だ」
店主に偉そうに支払って
私の背中を押しながら
古書店を出ようとした。
「…あのッ。
お客さまッ!!!
こちらの
八十万円のご本の方は…」
「俺、お坊ちゃまだから
こんな重いモノ
2冊も持って帰れないよ」
バイバイ、と
華麗に手を振るセイを
店主がいつまでも
呆然と
見送っているけれどッ。