授業をしている先生も
この状況が
落ち着かないらしく
心なしか
目が泳いでいるッ。
黒板に何かを書く度に
いちいちセイの方を
ちらり、と
確認していたりして。
…確かに
誤字、脱字
間違いなんかがして
名門校の制服を着た少年に
指摘され
保護者の前で
恥をかかされたくはないのは
わかるけど。
先生ッ。
ここはもっと自信を持って
教師生活25年の貫録を
見せつけてやってくださいッ。
なのにッ!!!!!!
「先生!」
静かな教室に
響くセイの声。
「……」
クラスメイトのみんなが
一斉に後ろを振り返り
手をちいさく上げている
セイの姿を
廊下の保護者とともに
固唾を飲んで見守ったッ!!
「ウチのトーコのスカートの
ファスナーが開いてるのが
気になるんで
父兄として
注意してやっても
よろしいでしょうか!」
ってッ!!!!!!
セイのひと言に
私のアタマは真っ白になり
教室が
どっ、と沸きあがるッ。