出来るなら
その包丁を取り上げて
自分でメロンを
カットしたいッ。
だけど
今、余計なコトを言うと
「俺を信じてないのか」と
倍返しされそうでッ。
セイに
過度なプレッシャーを
掛けない程度に
「キッチリ等分じゃなくても
構わないから
できるだけ
半分に近い形に切ってねッ」
お願いした
つもりだった、のにッ。
「……」
セイの眉間にに
深々とシワが寄って。
その表情に
何だか
ちいさい頃
お友達を呼んで
お誕生会をしたときの
騒動を思い出すッ。
分度器を片手に
「360は11で
割り切れない…ッ!」
ケーキを人数分
等分に分けられない、って
ケーキナイフを持った
セイのおおきな瞳から
ポロポロ、ポロポロ
涙がこぼれ落ち…。
ケーキの前で
自分の能力の限界に
ぶち当たって
悲嘆にくれる
セイだった。
それがどうだろう。
今では
完璧に
出来ないくらいなら
わかりやすく
不公平にッ。
ドコッ。
「……」
まっぷたつ、と表現するには
どう見ても不公平すぎる
メロンちゃんッ。
「ほれ。トーコ!」
セイが当然のように
差し出してきたのは…!
え。
「おおきい方…?」
思わず我が目を疑ったッ。
「おおきい方を
貰ってもいいのッ!?」