だけど

ケンちゃんひとりなら
まだよかったッ。


ドヤドヤと
次のレッスンを控える
幼稚園児達が

ケンちゃんを皮切りに
入室してきてッ。


「発表会のときの
写真だあああッ」

あっという間に
幼稚園児に取り囲まれるッ。


「指紋がつくから
触らないッ!!」

「鼻水、くっつけないでッ」

やりたい放題の子ども達から
カラダを張って
写真とアルバムを守ったッ。


「トーコッ。

ちょっと見ない間に
神経質なオンナに
成り下がったなッ」


「……」

相変わらずの
上から目線ッ。


発表会の想い出を
皆がそれぞれ一斉に
私に向かって
語り出してきてッ。

トドメは
発表会で歌った曲を
みんなで大合唱ときたッ!


…だけど。

歌い始めてみると
意外にも

「きれいな合唱曲…」で。


「お〜う、おッお〜♪」

美し過ぎるハーモニーに

ひとりだけ

「お」と「う」の発音だけ
やたらデカイ

雑音のようなガナリ声を
スパイスのように
効かせてはいますッ。


…聴いたコトがある
曲だけど

英語じゃない

外国語の歌詞で。


「何て歌だっけ?」

私の質問に

「Heidenroslein!」

みんなで揃って答えてて


…可愛くないッ。


「日本語だと
どういう意味かな?」

「う〜ん。なんだっけ〜」


「誰が作った曲?」

私の質問に
子ども達の目が輝いたッ。