「師匠のサリエリから
ハイドンやモーツァルトの
マネだと非難されて
落ち込んでたヤツッ!」
「自分の曲を3曲も
ゲーテに送ったけど
無視されたのよね〜」
「兵役につくのが嫌で
学校の先生になった
腰ぬけだろ?」
「自分の才能を
認めてくれていた
友人のベートーヴェンの
葬儀に参列した後
”この中で
最も早く死ぬ奴に乾杯!”と
音頭をとって
自分が一番早く
死んだんだよなッ」
「……」
タイトルや作曲家の名前が
思い出せないクセに
どうしてそんな
ゴシップ情報だけは
しっかり
覚えているのやらッ。
しかも
どこまでが本当なのかッ。
歴史上の人物とはいえ
「…会ったコトもないヒトを
そんな風に
言うモノじゃないと思う」
「トーコに
クラシックの何が
わかるとゆ〜のかッ」
あうあうあ〜ッ。
幼稚園児の反論に
言い返すコトバが
見つかりませんッ!
騒ぎまくる子ども達の
奇声の中
「おいッ!
トーコッ!!!」
私を呼び捨てにする
雄々しい声が響き渡るッ。
「セイッ!?」
「馴れ馴れしく
触るんじゃないッ」
と言わんばかりに
無邪気に
まとわりつこうとする
子ども達を
目で威圧しながら
セイが教室に入ってきた。
「お前、カギ持たずに
家を出ただろ?」