俺、出掛けなきゃ
いけないから、って
「…寝ぼけてるんだとばかり
思ったら
ちゃんと私の話
聴いててくれてたんだ…」
「当たり前だ!
俺を誰だと思っているッ」
…オオカミの
群れの中で暮らす
いたいけなヒツジとかッ!?
だけど。
わざわざ
持ってきてくれたんだ。
「取りに戻れ、とか
言われたら困ってたよ」
「トーコなんかを
無条件に雇ってくれる
奇特な人間は
大事にしなきゃな」
セイがオーナー先生の
とぐろを巻いた髪型を
指で表現して。
「おうッ。
でんでんは
老いぼれてはいるが
いいジジイだぞッ」
ケンちゃんが
会話に入ってくるッ。
「でんでん?」
「デンデンムシみたいな
髪型してるからじゃない?」
「…そうなのか?
コイツの感性からいったら
とぐろを巻くと言えば
ウンコ…」
「あ〜あ〜ッあ〜〜ッ!!!」
私はセイの口を
手でふさいで
「さ〜えッなん
えろ〜えんてッ」
子ども達が歌っていた
曲を口ずさんで誤魔化したッ。
「…それって
もしかして
Sah ein Knab\'
ein Roslein stehn
って歌ってるつもりか?」
「セイッ。わかるのッ!?」
「Heidenroslein
野ばら。
ゲーテの有名な詩だな」
「ゲーテの曲なんだあ」
スッキリしたあ〜。
のにッ。
何ッ、部屋に漂う
この冷たい空気はッッ!!!