チュッちゅ♂021


それはひと目惚れだった。

スウェーデンの
手刺繍が見事な
白いクッションカバー。

高いヤツは
目が飛び出しそうな
値段だったけど

一番安い
ワンポイント刺繍なら

何とか私でも買えそうだッ。


「サイズだって
ぴったりだしッ」

これは運命の出逢いとしか
思えないッ!


「…白いファブリックなんて
ウチの家には不向きだろ」

セイにはそう
反対されたけどッ。


「ウチのクッション
ずいぶん表面が
擦り切れてきたしッ」

「それはお前が
クッションを凶器にして
俺を殴るから、だろう?」


またすぐに汚れるのは
目に見えている、って

冷ややかな目で
セイにカバーを
店の棚に戻されるッ。


だけど

「この
クッションカバーにしたら
これからは大事に扱うから!」

どうしても欲しかったから


「もうクッションで
セイを殴ったりしない、って
約束するからッ!!!」

私がさらに泣きを入れると


「…約束、忘れるなよ」

セイが
溜息をつきながら

お店で一番高価な
クッションカバーを
手に取って


「2個でいいんだな?」

レジの方へと
持っていくでは
ありませんかッッ…!!!


「…ひと雨きそうだから
コイツを濡らさないうちに

今日はさっさと帰ろうか」

なんてッッ!!!


「…セイッ」

どうしたんでしょおおお。

本当に大雨が
降ってくるのでは
ないでしょおおおおかッ。