今日は何かの
記念日だったっけッ。


それとも、これは

セイお得意の
有頂天にしておいてからの
突き落とし、なのかッ。


予想できなかった
この事態に

私の疑心暗鬼が

どんどん、どんどん
私の中で
おおきくなっていくッ。


電車の中から
どんより
曇った空を見ながら

ときおり
ガラスに映る
セイのやわらかな笑顔に

想像力をたくましく
してしまうッ。


そんな私のココロを
見透かすように


「あのさ」

「はいッ!?」


ふいに
セイに声を掛けられ

イッキにカラダが
緊張したッ。


「その刺繍ってさ。

俺が生まれた家の
ゲストルームにも

似たようなヤツが
たくさんあったんだけど」


覚えてない?、って

私の抱えていた袋を
肘で突いてきて。


「……」

…そうだったけ。


残念ながら
記憶力には自信がないッ。

だけど

確かに
写真で見たセイのママは

こ〜ゆ〜のが好きそうな
洋服を着ていたよね。


「…セイのママ。
自分で刺繍したのかな」


「さあ…
どうだったんだろうね」


セイが笑う。


「…これ大事にするからね」

私はそうセイに誓った。