…ヒトの気持ちも知らないで。
「ねえ、トーコ〜」
セイの足が布団の中に
そっと忍び込んできて
冷たいヒザが
私のお尻を突っついてくる。
「…洋服、着れば?」
「ひとりじゃ着れない」
「脱ぐときはひとりで
脱いでたでしょッ!!!」
甘えてくるセイに
枕を押しつけようとして
「あッ…んッ」
セイに簡単に組み敷かれた。
「ほら。
さっきから
憎たらしい口を利いてるのは
どの唇だ?」
私の顔を覆い隠していた枕を
払い除けようとしていた
セイの手が
止まる。
「…トーコ?
泣いてるのか?」
「……」
セイに指摘され
初めて
自分が泣いているコトに
気がついた。
「…だってッ!」
悔しかったんだもん!!!
「先生もクラスメイトも
お前がやったんだろ、って
決めつけてかかっててッ」
「……」
「そりゃあ、あの先生が
そんなミスをするなんて
シャレにならないしッ
いつもウッカリさんの私が
しでかした、ってゆ〜方が
みんなも納得しやすいのも
わかるけどッ」
私はそこまで
イッキに捲し立てると
また今日のコトを思い出して
大声で泣いてしまっていた。
「…学校のトイレで
何があったって?」
枕から出ていた私の口元を
セイの指がやさしく往復する。
「…職員室のトイレッ」
私は
しゃくり上げるようにして
セイの問いに答え始めた。
「今月、遅刻や無断欠席が
あまりにも
続いてるから、って
昨日、放課後に
トイレ掃除を
させられたんだけどッ」