「銭湯を出るとき
あんなオコチャマを
連れてるのよ、なんて目で
見られるのは
オトコとして屈辱だッ」
「だったら
他人のフリして入って
バラバラに帰れば
いいじゃないッ」
私は自分の荷物を
奪還して
銭湯めがけて駆け出した。
「おまえにそんなコトを
決める権限はないッ」
セイにコートのフードを
掴まれて
転びそうになるッ。
「母さんから
おまえのコト
頼まれてるんだから
勝手をするなよな」
…セイってば
本当にママ達に
気を遣ってばっかりで。
トーコが心配だから、とか
ウソでも言えんのかいッ。
「だったら
私とじゃなく
ママ達と銭湯に行けば
いいじゃないッ」
「母さんは
いかにも父さんを待って
銭湯に行くみたいな言い方を
してたけど
たぶん今頃
お湯でカラダを洗って
済ましてると思うよ」
「え…」
「母さんは
手術の痕を他人に見られるのに
慣れてないから」
…あ。
すっかり忘れてた。