チュッちゅ♂007
セイは動物が大好きで。
ちいさい頃は
近所の犬を借りて
毎日散歩に連れて行ったり
ペットショップのオウムに
コトバを教えたり
野良猫の後を
ついていったり。
「てっきり
将来は獣医さんになるのかと
思ってた」
「獣医ってさ。
たくさんの弱った動物を
毎日見て暮らすんだぞ」
セイが
珍しく真面目に答えた。
「こんな野生の動物DVD
借りてくるなら
何かウチで飼えばいいのに」
セイってば
もうかれこれ3時間は
リビングの
大画面テレビを独占している。
「ウチのマンションは
動物を飼うのが禁止だし」
「マンションの同じ階のヒト
ケッコー内緒で
みんな飼ってるよ」
「トーコってさ。
赤信号でも
みんなが渡ってれば
トラックが
突っ込んできてたって
渡っちゃうタイプだモンな」
…どういう意味だッ。
「それにウチは
父さんが動物の毛、苦手だし」
「毛のない動物にすれば
いいじゃないッ」
「毛のない動物、って
盛りを超えた
80過ぎのじいさま、とか?」
「文鳥とか、カメとかッ
カバとかッ!!」
「…トーコの場合
ジョークと素の
区別がつかないから
タチが悪い」
笑うに笑えん、って
眉間にシワを寄せなくても
いいじゃないッ。
「私だって
動物園でカバくらい
見たコトあるからッ」