「やっぱり凄く並んでるね」

「運が良ければ
1回目の上演を見れるかな」


セイってば

なんだかとっても
嬉しそうだ。


近くの自販機で
私の好きなコーラを
1缶買ってきて

ふたりでチョコチョコ
回し飲むッ。


ケチらずに2缶
買ってきてくれたら
いいモノを。


「セイはみょ〜なトコ
ケチだよねッ」

「こ〜ゆ〜のは
ケチとは言わないんだ!」


コーラの缶で
私のオデコを
冷やしてきてッ。


「恋人同士の特権♪」


セイが
私の唇を素早く盗んだ。


…まったくもお。

みんなが見ている前で
恥ずかしいッ。


「何だかこ〜ゆ〜の
しあわせを感じるよな〜」


今日はいいコト
ありそうな気がする、って

セイってば
上機嫌で。


だけど

セイのそんな予言を
あざ笑うかのように

私達の前で
入場の列が切られてッ。


「ついてないッ」


さらに30分も並ばなきゃ
ならないなんてッ。


なのに
セイってば

とっても
嬉しそうにしてッ。


「トーコとふたりなら
退屈しない♪」


私の髪を編み込みにして
遊んでるッ。


「レゲエみたいに
しないでねッ」


「わかってる」


その機嫌の良さに
どうも不安を
かき立てられますッ。


「トーコの毛
針みたいで
ケッコー刺激的♪」


うぬぬぬぬ〜うッ。


朝っぱらから
こっちの方が
機嫌、悪くなりそうですッ。


だけど。

本当に楽しそうに
私の髪をいじってる
セイを見てると

怒っているのも
アホらしくなってきて。


「お待たせしました」

入場開始のスタッフの声に
笑顔になるッ。


「待たされました〜♪」