2016.12.07 その後


クリスマスを目前に控え

夜の繁華街は
どこもかしこも
キラキラしている。


「すごいねッ、セイ
空から
光が落ちてきそうだよッ」

ケーキの箱を抱えながら
セイの後ろを歩く私に

「上ばっか向いて
ちんたら歩いてたら
転ばされるぞ」

人混みの中

道を開けろよオーラを
全身から放ちながら

1メートル越えの
クマのぬいぐるみを
乱暴に肩に担いだセイが

振り向きながら
ガンを飛ばした。


「ったくッ、なんで
リリックスなんかの為に

こんなプレゼント
俺達が買ってやんなきゃ
なんね〜んだよ!」


「だってッ
リリックスさんッ」

恋愛小説家とか
言いながら

今年の誕生日も
おひとりさまでッ

「クリスマスの夜も
おひとりさまなんて」

あまりにも
痛々しいじゃないッ。


「アホらし〜。

独り寝の寂しさが
こんなモノで
埋まると思ってる

トーコの感性を疑うワ」


セイの肩の上で

ぬいぐるみの上半身が
おおきく揺さぶられッ

「ただでさえ
目立っているのに…」

私はセイの背後で
身をちいさくする。


さっきからセイは
文句ばかりつけてますけど

何がそんなに
気に喰わないんだかッ。


まるい眉毛のついた
このぬいぐるみのコト

私の顔と見比べながら

「コイツのとぼけた顔
妙に親近感沸くな」

とかなんとか言って

満足そうに
レジに持って行ったのは

他ならぬ
アナタでしたよねッ。


「オラオラオラ!
ちんたら歩いてっと
置いてくぞッ!」

「セイこそッ
突然、立ち止まったり
しないでねッ」


私はケーキの入った箱を
両手で包み込むよう
抱き直した。


「ケーキなんか潰れても
味は変わんねえよ!」

「……」


そんなコト言われたら

意地でもケーキを
死守したくなるッ。


「お前、俺を人混み避けに
使ってるようだけど」

「……」


「このまま
追いついて来ない気なら

お前のコト
本ッ当おおおおおに
置いてくからな!」


有言実行のオトコッ
セイの歩調が速くなった。


「えッ、ちょっと待ってッ」


横に並んで歩き出した私に
送られてくる

冷ややかなセイの視線ッ。


ヤバいッ
本当に怒ってるッ!?


ドキドキしながらうつむく
私の肩に

通行人の肩が触れ

「あッ」

ケーキの入った箱を
危うく傾けそうになった
私のカラダを

セイの右手が支えていた。


「…置いていくとは
言ったけど

俺のコートを掴むのは
お前の自由だからな!」


そう言って
イルミネーションを
見上げているセイの腕に

「……」

私はそっと
自分の腕を回してみる。


「フン」

「…リリックスさん
このクマくんのコト
気に入ってくれるといいね」

「ケチなんぞ
誰がつけさせるか」


街のイルミネーションが
キラキラキラキラ

恋人達の後ろ姿を
冷やかすように
見送っていた。





After Birthday ♪

2016.12.07 その後

≪〜完〜≫



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