2020.12.07 その後


メルマガの締め切りに焦り
執筆する私の横で

生意気極まりない
悩める少年が

私が「ひなた」と名付けた
巨大クマのぬいぐるみの額に

顔を埋め

「はあああああ…」

またひとつ
深い溜息をついていた。


「もお〜…。
さっきから、何なのよ!」

いっこうに執筆が
捗らない私は

ダンッ!

Enterキーに八つ当たり。


【Believe yourself】
と書かれた

お気に入りの
うさぎ柄のカップの

まだ温かさが残る
黒糖入りシナモン珈琲を

飲み干した。


「…何よ」
「……」


俺の創造主なのに
そんなコトもわからないのか
と言わんばかりに

眼光鋭い少年の

不平不満いっぱいの目が
こちらに向けられる。


「そもそも、さ〜

トーコちゃんが
大ッ事にしていた

アムちゃんのサインに

落書きなんかをした
キミがイケないんでしょ」


「フン」


私の指摘に
少年が唇を尖らせた。


「トーコちゃんの
大事なモノを
片っ端から壊していく

そのクセ

そろそろ直さないと」


「なんだよ!

俺とトーコを
どうしようって
言うんだよ!」


「…別に〜」


「創造主だからって

キャラクターを脅して
許されると思うなよ!!」


まだまだ
青臭い俺様キャラは

巨大なぬいぐるみの
その顎下に

頭突きの連打を
食らわせる。


「ストップ!
スト〜〜〜ップ!!」


私が深呼吸を促すと

「トーコに
俺より大事なモノが
あるなんて

許せるか!」

ボスッ!

ぬいぐるみのボディに
鋭い拳が突き刺さった。


「…かなり病んでるね」


わたしの不用意な発言に
ぬいぐるみの巨体が
宙に舞う。


どごんッ。


ふすまに当たった風圧で
クリスマスの壁飾りが

おおきく揺れた。


「あ〜、俺ってば

何でトーコみたいな
つれないオンナを

好きに
なっちゃったんだろう」


ベッドの上で
悩める少年が突っ伏する。


「…それを作者の私に
聞きますか?」


リンリロン。


玄関の風を感じた
ウッドストックチャイムが

ヒトの出入りを
知らせると

「あ〜、セイの靴〜

やっぱり
リリックスさんのトコに
来てた〜」

玄関で
少女のおおきな声がした。


「チーズケーキの
差し入れ〜

セイと私の分も
入ってま〜す」


白いケーキの箱を
掲げながら

眉間にしわ
まあるい眉を三角形にして

部屋に入ってきた少女は

少年に
あざらしのスリッパを
投げつける。










After Birthday ♪

2020.12.07 その後

≪〜完〜≫



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