2021.12.07 その後


「リリックスさんってさ

肩から掛けるタイプの
扇風機

たくさん
持ってますよね」


だけど

白やピンク

色がすんごく
偏っている。


「こっちの2台なんて

同じヤツじゃ
ナイんですか?」


「部屋着とコーディネイト
したいたら

結果、どうしても
こうなってしまう」


「部屋着と?」

「うん」


「……」
「……」


肩掛けタイプのファンって
ふつう外で使うよね。


「……」
「……」


そういえば

どうしてこのヒトは
部屋の中で
使っているんだろう。


私の目の前を

ファンを装着した
リリックスさんが

空になった
マグカップを片手に

無言で
通り過ぎていく。


「あれ、涼む為じゃなく

消音の為に
つけているんだろ」


セイが

リリックスさんの
机の脇にある

射撃場で使う
ヘッドバンド式
防音イヤーマフを

私の耳に装着させた。


「消音、って
防音対策ってコト?」


「耳栓とか
こういうイヤーマフは

警報などが
ちゃんと聞こえるよう

設計されているから

甲高い声とか音とか
すりぬけて
聞こえるからな」


「……」


言われてみれば

射撃場用のイヤーマフを
つけているのに

公園や道路から
聞こえてくる
子ども達が大騒ぎする声や

スケボーのジャンプ音が

めちゃめちゃ
クリアに聞こえてくる。


「音を打ち消すタイプの
ノイズキャンセリングも
その点は同じ」


アタマをめちゃくちゃ
締め付けられてる割りには

セイのコトバも
ちゃんと聞き取れてるし

なんだかな〜。


「これだったら
ヘッドホンをつけて

大音量で
好きな音楽を流す方が

効果ありそう」


私がヘッドマフを外すと

「大音量の音楽を
聴き続けてると

耳へのダメージと脳疲労が
半端ナイからね…」

マグカップに
ホットミルクを満たした
リリックスさんが

私の前をまた横切った。


「それに
曲と曲の切れ目の
無音になった瞬間に

スケボーのジャンプ音が

カン、っとか
入ってくると

執筆中なんか
無駄にイラっとするし」


メルマガ配信時刻を
目の前にして

リリックスさんの
焦りが怖いッ。


「で、肩掛けファンに
たどり着いたワケか」


リリックスさんの
やるコト成すコトに

懐疑的な目を向けてきた
セイが

いつになく感心している。


「耳元で
モーター音をさせて

外から聞こえてくる音を
無効化させてるんだね」

私の理解に

「ちょっと違うかな」

ベッドの上に座り
ノートパソコンを
膝に載せながら

リリックスさんが私を見た。


「音は空気を伝って
届くモノだから

耳元で風を起こすコトで

甲高い音を
気にならない程度にまで
押さえてるの」


「……」
「……」


「まったくの無音状態も
精神的によくないらしいし

耳を完全に塞いじゃうのも
私的には
酸欠っぽくなるからね」


「……」
「……」


「風船とかを浮かべて
空気の流れを変える、って
方法もあるけど

部屋の中を
ゆらゆらされても
気が散るし…」


「……」
「……」


「……」
「……」
「……」


リリックスさんの部屋に
キーボードを叩く音が
響いている。


「……」
「……」
「……」


「…私達、お邪魔みたい
だね」


「フン」


お前に指摘されなくても
わかってる、と

言わんばかりに

セイが勢いよく
椅子から立ち上がり

「肩掛けファンくらいで
スケボーのジャンプ音が
消えるとは思えないけどな」

余計なひと言ッ。


「リリックスさんにとって

気にならなくなる
ってゆ〜のが
大事なんだと思うよッ」


私達はリリックスさんの
部屋を後にした。


「来年のリリックスさんの
お誕生日プレゼントは
肩掛けファンにしようか」


「それで執筆が
はかどってくれるなら

安すぎる買い物だけどな」










After Birthday ♪

2021.12.07 その後

≪〜完〜≫



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